焼酎える四つ

大地の記憶を宿す、
蒼い水

焼酎造りにおいて、水は単なる原料ではありません。
それは芋や米の持つ潜在能力を静かに目覚めさせ、その味
わいを高みへと導く寡黙にして不可欠なパートナーです。

出水酒造が仕込みに用いるのは、地下250メートルの深さから汲み上げる天然の地下水。何十年、何百年という歳月をかけて、鹿児島の火山性の大地がゆっくりと濾過したこの水は、私たちの焼酎の生命線と言えます。

pH値が8.2を示すアルカリ性の天然水であり、素材の味を一層深く、そして鮮やかに引き出す力を持ちます。不純物をほとんど含まないその清らかさは、タンクに満たされた際に「透き通った青い水」に見えるほど。この大地の記憶を宿す水こそが、出水酒造の焼酎に共通する、清らかで優しい口当たりの源泉なのです。

「黄金千貫 」
の物語

芋焼酎の味わいを決定づける「黄金千貫」。
しかし今、この芋の王は「サツマイモ基腐病」という病により、生産量が激減するという危機に瀕しています。この困難な状況でも、私たちは最高の焼酎を届けるため、この芋を使い続ける覚悟です。

健康な苗をハウスで大切に育て、力強い生命力の基礎を築きます。

蔵人、農家、土地が一体となり、一つひとつ手作業で畑に植え付けます。

無農薬・無肥料。南国の太陽を浴び、土の力だけで風味を凝縮させます。

機械と人の手が融合し、一年間の努力が黄金色の芋となって実を結びます。

鮮度を保ち、芋のヘタまで丁寧に切り落とす「引き算の美学」で完璧を追求します。

味わいの設計図、
こだわりの米選び

なぜ芋焼酎に米が?
それは焼酎造りの心臓部「麹」を造るためです。米麹がさつま芋のでんぷんを糖に変えアルコール発酵を導きます。
私たちはこの重要な米にもこだわり、銘柄ごとに使い分けることで、味わいに深みと個性を与えています。

ヒノヒカリ

Izumi's Hinohikari

私たちの米選びの基本となるのが、地元出水が誇る良質な「ヒノヒカリ」です。九州を代表するこの人気品種は、粘り、香り、甘みのバランスに優れ、ふっくらと艶のある米が育ちます。食べても格段に美味しいこの米を贅沢に使うことで、焼酎の旨味は増し、その味わいは格段に美味しくなるのです。

タカラマサリ

Izumi's Takaramasari

焼酎造りのために開発された麹好適米「タカラマサリ」も、私たちの選択肢の一つです。この米はアミロース含有率が高く、蒸してもベタつきにくいという特性を持っています。これにより、麹菌が米の一粒一粒にしっかりと繁殖し、キレのある清涼感と飲みやすさが特徴の、質の高い麹を造ることが可能になります。

夢十色

Izumi's Yumetoiro

より個性的な香りを追求する際には、「夢十色」がその力を発揮します。この米は焼酎醸造に最も適した麹用米の一つとされ、特に「赤鶴」などの銘柄では、その香ばしさを引き出すために使用しています。高アミロース米ならではの特性が、麹造りにおいて独特の風味を生み出すのです。

時が生み出す魔法、
甕壷熟成の秘密

蒸留したての若々しい原酒が、深くまろやかな味わいへと昇華するため、私たちの蔵では伝統的な甕壷での熟成を選びました。
それは、甕壷が単なる容器ではなく、酒質を向上させる「生きている器」だからです。

甕の呼吸

甕壷は目に見えない無数の気孔で呼吸をしています。これにより原酒の荒々しい香りが穏やかになり、ごく僅かに空気に触れることで、信じられないほどまろやかな味わいに変化します。

触媒作用

甕の陶器に含まれる無機成分が原酒に溶け出し、触媒として作用します。これにより熟成を促す化学反応が活発になり、華やかで複雑な香りと、奥行きのある豊かな味わいが生まれるのです。

出水酒造える
四つ

要素 こだわり 味わいへの貢献
仕込み水 地下250mから汲み上げた、
pH8.2のアルカリ性天然水。
芋と米の風味を呼び覚まし、
透明感のある滑らかな口当たりを生む。
さつまいも 自然栽培の黄金千貫。ヘタまで丁寧に取り除き、美味しい部分だけを使用。 上品でバランスの取れた甘みと、豊かで芳醇な
ボディを与える。
銘柄ごとに米の品種を使い分け、
特性を活かした麹造りを行う。
深く複雑な旨味の土台を築き、
洗練された余韻をもたらす。
熟成 甕壷の呼吸と触媒作用により、
原酒をゆっくりと変化させる。
荒々しさを取り除き、まろやかで複雑、
奥行きのある味わいを生み出す。